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ミルシート(鋼材検査証明書)の 用途や見方、内容を解説します! Vol.1

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ミルシート(鋼材検査証明書)の 用途や見方、内容を解説します! Vol.1

鉄鋼関連のお仕事をされている方であれば、当たり前のようにやり取りをしているミルシート。今回はその『ミルシート』について2回にわたって解説いたします。

目次

  • ミルシートって?
  • ミルシートの記載内容と保証内容
  • ミルシートの実績値
  • ミルシートの見方
  • ミルシートの化学成分の記載について

機械的性質記載や管理手法の好事例はVol.2でご紹介予定です。

クマガイ特殊鋼ミルシート解説

ミルシートって?

ミルシートは、製鉄所を表す「ミル」と紙を表す「シート」を重ねた和製英語です。ミル(mill)とは、粉を挽いたり、圧延機で鋼材を圧延することですが、圧延で鋼材まで作っている製鉄所のことをミルと呼びます。


ミルシートの正式名称は、「鋼材検査証明書」です。英語では、「INSPECTION CERTIFICATE」や「MILL CERTIFICATE」などと呼びます。


ミルシートは、製鉄所が鋼材を出荷するときに別途商社に提出されます。

商社から入手することになりますが、市中での取引の場合は、販売店などがミルシートの中の、この鋼材だということでマークして配布する場合もあります。

ミルシートの記載内容と保証内容

記載される内容には、

  • 注文者
  • 契約番号
  • 証明書番号
  • 需要家名
  • 注文サイズ
  • 商品名
  • 規格

などの基本事項に加え、その製品独特の製品番号、製鋼番号などが記載されます。その上で『成分の実績』『機械試験の実績』などが記載されます。

機械試験は『引張試験』『曲げ試験』『シャルピー衝撃試験』など規格に決められた内容が記載されます。それらが規格に決められた範囲を満足していることが証明されているのです。


ミルシートを見ただけでは、本当にその実績値が規格に入っているかはわかりませんので、本当に規格通りになっているかを確認するには、規格を参照して対比することが必要になります。

実際には、製鉄所の品質保証責任者のサインと印鑑があり、満足していると保証しているので内容まで確認することは少ないかもしれません。

よりチェックしやすくするために、「規格値の上下限をミルシートに記載してもらう。」ということもできなくはありません。

ミルシートの実績値

ミルシートの実績値は必ずしも当該の製品で試験した結果を載せているわけではありません。試験頻度は規格ごとに決められており、同じロットの中で代表で試験した結果が、載せられることになります。従って同じ数値が並ぶ場合もあるのです。


ミルシートを見るといろいろな情報がわかります。規格に対してどんな範囲を狙って製造しているのか、ばらつきがどうなっているのか、いろいろな規格に対してどのように成分を共有化しているのかなどなど。


メーカー間の比較をしてみても面白いかと思います。

ミルシートの見方

さて、実際のミルシートの見方について詳細に紹介したいと思います。

基本項目の注文者、契約番号、証明書番号、需要家名、商品名、規格、製鉄所名、発行日などについては、特に説明は必要ないと思います。


ミルシートの内容について問い合わせするときは、証明書番号か契約番号(製鉄所によっては受注番号や注文番号だったりします)をキーにするのがいいと思います。


ミルシートに載っている鋼材について問い合わせするときは製品番号(これもロール番号などの呼び方になることもあります)もキーにする必要があります。


ミルシートの寸法の記載について

図1に例を示すミルシートの寸法についてですが、あくまでも注文された寸法であり実績値ではありません。


鋼板の場合、厚さ×幅×長さで表します。単位は基本的にmmですが海外向けなどではごくまれにインチやフィートで表すものも有ります。その場合は、数字の後に「“」や「‘」が付きます。これも、理解はしやすいと思います。なお員数は個数のことで、鋼板の場合枚数に相当します。

図1ミルシートの寸法記載例
図1 ミルシートの寸法記載例

ミルシートの化学成分の記載について

次に化学成分ですが、一例として図2に示します。


基本の5元素であるC(炭素)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)、S(イオウ)を始めとして、添加された元素等が記載されます。分析結果が通常「%」で表記されます。重量での百分率です。


通常は溶けた状態の溶鋼での分析値になりますが、要求によっては鋼板から採取した製品分析値も記載される場合もあります。その場合は分析区分などの欄に記号が入ります。それらは欄外の注釈(NOTES)などに説明されています。


分析数値は小数点を含むそのままの数字で記載される場合もあるのですが、何倍かして整数値で表記されることが多いです。例えば、×100の表記がある欄に17という数値があれば、100倍してその数値になるということを示していますので、もともとは0.17%ということになります。×1000の欄に4とあれば、0.004%ということになります。この倍率は小数点以下の有効桁数にも相当しています。


×100や×1000の代わりに、1/100や1/1000という表記になっている場合があります。1/100の欄に17とあると、その数値を1/100倍すると成分率になるということを示しており、やはり0.17%のことです。


間違えることは無いと思いますが、少し紛らわしいので本当は統一して欲しいですね。


成分の欄には、成分から計算され溶接性を表すPcmやCeqなどの数値が記載されることもあります。計算式自体もミルシートに記載されるのですが、ミルシートに記載されている数値そのもの、前の例でいうと「17」をそのまま代入しても数値が合わない場合があります。


特に×100以外の有効桁数になっている元素が混在していると合いません。これは、PcmやCeqはあくまでも個々の元素の%を前提にした計算式であり、ミルシートの各元素を%に換算した値で、計算しないといけないことによります。ミルシートでは最終計算結果の数値も×100などとして整数値化して表記される場合が多いです。

また、成分の記載は、2行に渡っていることもあります。図2の例で言うと「Ti」や「Pcm」が上段に記載されています。


なお、化学成分に肝心の鉄「Fe」が載っていませんが「Feの中にこのような元素が入っています」という表現になっているためです。記載以外の元素はほぼFeであると理解してください。


「金」ではどれだけ純金に近いかが価値ですので、金の純度が表記されるのですが「鉄鋼」では、鉄の純度よりもFe以外の各元素の添加量で性能が大きく影響を受けるので、このようになっているのだと思います。

図2ミルシートの化学成分記載例
図2 ミルシートの化学成分記載例

ここまで、ミルシートの基本から見方、化学成分の記載内容などを解説いたしました。


次回Vol.2では、ミルシートに記載されている機械的性質について、さらにミルシートの効率的な管理方法について、解説していきたいと思います。

クマガイではミルシート管理のデジタル化を進めています。

メーカーや商社から紙やFAX、画像データでしか提供されないミルシート。クマガイではミルシートのデジタル化を実現し、正確性や業務効率アップに役立てています。

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