よくわからない⁈ S-TENについてスッキリ解説!vol.2 ~耐硫酸・塩酸露点腐食とは~
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※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。
前回までは、S-TENの概要や硫酸露点腐食・塩酸露点腐食、S-TEN適用や操業上の注意点という内容をご紹介しましたが、今回は以下の内容を解説していきます。
vol.2 目次
- S-TENの規格
- S-TEN1とS-TEN2の使い分け
- S-TENの溶接、加工
- 適用例
S-TEN鋼の規格
前にも書きました通り、S-TENにはS-TEN1とS-TEN2の2種類があります。
公的規格ではなく日本製鉄の規格になります。厚板材の規定値を表1、2に示します。
化学成分は主に耐食性を持たせるために決められています。
機械的性質については、S-TEN1はJIS G3106のSM400Aを、S-TEN2はJIS G3106のSM490Aを満足するように決められています。
従って、公的規格のJIS材が必要な公共工事や建築基準法が適用される煙突などの用途にも適用することができます。ただし、鋼材検査証明書(ミルシート)にJIS適合材であることを記載してもらうためには、発注前の指定が必要になります。
こうしておけば、余ったS-TENをSM材として使うことだってできるわけです。もちろん逆は成り立ちませんが。機械的性質は異なりますが、厚板以外に、熱延材、冷延材、鋼管などもありますのでご相談ください。
S-TEN1とS-TEN2の使い分け
S-TEN1とS-TEN2の使い分けについて一番の違いは、環境に塩酸露点腐食があるかどうかです。
塩酸露点腐食がある場合や塩酸酸洗槽などはS-TEN1が前提になります。
カタログでは350~500℃の高温の排ガスの場合、S-TEN2を推奨しています。これはもともとの開発思想が、S-TEN2の方が高温・高濃度の領域を目標にしたものであるためではないかと思いますが、あまり大きな差はないのでどちらでも構わないのではないでしょうか。高温強度の絶対値は、母材強度の高いS-TEN2の方が高くはなります。また、S-TEN2の方が常温強度も高いので、設計上高強度が必要な場合もS-TEN2になります。
耐候性はS-TEN2の方が良好なので、外気に触れるような屋外設備の場合は、S-TEN2が好ましい場合も考えられます。いずれにせよ、実環境で評価しないと正確に判断できないのではと思われます。
S-TENの溶接、加工
S-TENはSM材代替も可能であることからもわかるように、溶接性については良好です。
合金は入りますが、その分、炭素、マンガンを下げていますので溶接性は同等です。
ただし、溶接部も母材部と同様な耐硫酸露点腐食、耐塩酸露点腐食性能を有することが必要なため、S-TEN鋼同士を溶接する場合、母材成分を配慮した表3のような専用の溶接材料が必要になります。
日鉄溶接工業(株)にて手配できます。
日本製鉄のカタログでは、専用の溶接材料を使った場合、溶接部も母材と同様の耐食性を示す写真が載っています。
S-TENとステンレスとの溶接では異材継手用の溶接材料が必要になります。
S-TENと一般鋼との溶接では、溶接部の耐食性は要求されないと思いますので、その場合は一般の溶接材料で構いません。
S-TENの切断、曲げ加工などについても、SM400A、SM490Aと同様に可能で、特別に配慮することはありません。そういう点では、扱いやすい材料とも言えます。
適用例
S-TENは発売以来50年以上が経過し、長年にわたって圧倒的な市場競争力を有しています。
適用された施設も数多くあります。
火力発電所、ごみ焼却施設、電炉工場、製紙工場、セメント工場、船舶、石油精製工場、メッキ工場、等々。設備的には、煙道、煙突、集塵機、空気予熱器、熱交換器、節炭器、排煙脱硫装置、塩酸酸洗槽等々。
燃焼のある所にS-TENありです。ぜひ、新たな用途含め、ご相談ください。
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