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ズバリ!耐摩耗鋼(ABREX®︎)のメリット解説 vol.1 ~硬さのレベルと靭性について~

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ズバリ!耐摩耗鋼(ABREX®︎)のメリット解説 vol.1 ~硬さのレベルと靭性について~

このブログは特殊鋼のスペシャリストであるクマガイ特殊鋼が、業界ビギナーから百戦錬磨のベテラン社員さん等に向けて、特殊鋼に関する基礎知識はもちろん「なるほど!」と思っていただけるようなまめ知識など、楽しく情報収集していただけるブログを不定期で更新しております。

とにかく硬い!摩耗量を劇的に低減

交換コストや機械負担も減らせます

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※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。

目次

  1. 耐摩耗鋼とは?
  2. 耐摩耗鋼の硬さはどれぐらい?
  3. 耐摩耗鋼の硬さレベル
  4. 耐摩耗鋼の靭性

1.耐摩耗鋼って聞いたことがありますか?

文字通り、摩耗に耐える鋼材です。

物がこすれるところに摩耗が発生します。

土砂や岩石を相手にするブルドーザー、ダンプの荷台、油圧ショベル・ホイールローダーのバケット、コンベアシューター・ホッパー、破砕機の刃、アンローダーのグラブバケット、圧砕機、・・・いたるところで摩耗は発生していますね。

摩耗するところは、取り替えたり補修することが必要になりますが、費用が掛かかりますしその間は稼働できなくなるので、なるべく摩耗を減らすことが重要です。

そのために効率的なのが、摩耗に強い耐摩耗鋼を使うことです。耐摩耗鋼は溶接して使うことができるので、一般鋼材の上にパッチあてしてその部分だけを交換することも可能です。


耐摩耗鋼以外にもセラミックスや硬化肉盛り等、耐摩耗性のある材料はあります。どれを選ぶかは使いやすさや経済性によるものと思います。


さて、耐摩耗鋼はなぜ摩耗が少ないのでしょうか。それは鋼材の硬さを上げていることによります。

一般的には硬さと摩耗性には相関があり、硬いほど摩耗が少なくなります。ガラスにダイヤモンドでは簡単に傷がつきますが(すなわち削れている)、普通の鋼材ではなかなか傷がつきません。硬さが違うもの同士で傷つけあうと、柔らかい方がより傷つきます。

耐摩耗鋼は鋼材中の成分と熱処理でガラスに近いところまで硬さを上げています。鋼材は焼入れという熱処理を実施すると硬くなります。硬くした上で、鋼材の粘り強く割れにくいという特徴を持っています。


2.耐摩耗鋼の硬さはどのくらいなのでしょうか

硬さを表す指標として試験法により、

  • ビッカース硬さ
  • ロックウェル硬さ
  • ブリネル硬さ
  • ショア硬さ

などがあります。

耐摩耗鋼ではブリネル硬さで表すのが一般的です。


標準的なブリネル硬さ試験は、10㎜φの超硬合金球を3トンの力で鋼材に押し付けて鋼材についた圧痕の直径から硬さを決定するものです。

圧痕は鋼材が硬いほど押し込まれにくいので小さくなります。


超硬合金とはタングステンカーバイド(WC)をコバルト(Co)で固めたもので、タングステンカーバイド自体はダイヤモンドに次ぐ硬さだそうです。10㎜の玉に3トンかけてもびくともしない超硬合金球っていうのもすごいですね。


各硬さの換算に関しては、数年前までJISハンドブック 鉄鋼Ⅰの「参考」に載っていましたが、最近削除されています。もともとアメリカの自動車関係の規格であるSAE J417から引用したものです。現在ではISO18625でも確認できるようです。本当はここにも載せたいのですが、著作権の問題があるので省略します。


3.耐摩耗鋼の硬さレベル

耐摩耗鋼の硬さレベルとしては、各社ブリネル硬さで400クラス、450クラス、500クラス等が規定されています。日本製鉄では

  • ABREX®400
  • ABREX®450
  • ABREX®500

これらがベース規格として存在します。

日本製鉄では新日鉄発足前の1960年代から世界に先駆けて耐摩耗鋼を製造販売していたようですが、新日鉄と住金が統合した2012年にブランド名をABREX®に更新しています。

(ABREXは日本製鉄株式会社の登録商標です)

当社展示会パネル

表面にダイヤモンドを押し付けて硬さを測定するビッカース硬さでは、400クラス、450クラス、500クラスはそれぞれ420、480、530程度になります。普通のガラスは550程度のようです。

他の鋼材と比べると、硬さレベルとしては、50キロ鋼がブリネル硬さで150程度、80キロ鋼が240程度なので、耐摩耗鋼はそれらよりも相当高くなっています。

普通鋼より数倍の耐摩耗性があるというのも納得できます。


4.耐摩耗鋼の靭性

一般的には硬さが高くなると靭性が下がる(もろくなる)傾向になります。

それでも、各社耐摩耗鋼のカタログによるとそれなりの靭性は有しているようです。特に極寒の地で使用されるような場合は低温靭性を保証した高靭性タイプが必要になりますが、一般的には通常のタイプで十分と思われます。


ガラスはダイヤモンドで直線の傷をつけるとその部分が簡単に割れますが、これは靭性が非常に低いためです。

昭和の時代、家のガラスが割れるとガラス屋さんが来て、サイズを測って切断して入れ替える。なんてこともありました。


鋼材はそれなりの靭性がありますので、そんな簡単に割れるようなことはありませんが、亀裂が存在した状態で強い衝撃が加わると絶対に割れないということではありません。


実際の吸収エネルギーは、溶接構造用鋼が27J以上の規格保証要求でも実績値は100J をはるかに超えている場合が多いのに対して、各社耐摩耗鋼のカタログ値ではでは30~60J程度のようですが、母材靭性が低いのが原因の割れはあまり発生していないのではないでしょうか。


各種材料の硬さ、靭性、価格レベルのイメージ表

abrex硬さイメージ

今回は耐摩耗鋼(ABREX®︎)の概要や用途、硬さ、靭性などについてご紹介いたしました。


次回は、耐摩耗鋼はどうやって作られているのか?また、利用する際の注意点などを解説する予定です。

切断・溶接・曲げなどの加工や、工具に関するノウハウなど『とにかく硬い耐摩耗鋼』の加工時にお役に立てる情報をお伝えいたします。

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