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チタンという素材 種類や特徴、性質について vol.1

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チタンという素材 種類や特徴、性質について vol.1

皆さんは、チタンについてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

身近なものでは、「メガネフレームや腕時計、ドライバーのヘッド、自転車、水筒など、値段が高いけど軽くて錆びない。」こんな感じでしょうか。

鉄などの金属素材に比べると歴史が浅く、適用範囲も限定されてはいますが、新しい素材だけに改善も進んでいますし、用途も拡大しています。ここで改めてチタンについて紹介したいと思います。

Tiの結晶構造

純Tiは常温では稠密六方構造(hcp)と呼ばれる結晶構造を示しこれをα相と呼びます。高温にすると885℃で同素変態を起こし、体心立方構造(bcc)に変化し、これをβ相と呼びます。


鉄が常温で体心立方構造を示しこれをα相と呼び、高温では稠密構造である面心立方構造(fcc)を示しγ相と呼ぶのと混同しないようにしないといけません。


Tiにバナジウム(V)などの合金を添加することによって、常温でα相とβ相の混在した状態、あるいはβ相単独の状態にすることができます。また、熱処理により、高温でのα+β相やβ相を常温で達成させることもできます。これらの相により素材の性能が変わってきます。


いきなりややこしい話から入りましたが、ここでは結晶構造の違いで相という分類がなされ性能が変わることと、チタン材料は、大きく分けると、純チタン系と合金チタン系の2つになることを理解していただけば十分です。

チタンの種類と特徴

純チタン系

素材としてのチタンと言えば、まずは純チタンに近いものがあります。


比重が4.51と小さく、鉄の7.87やステンレスに比べて約60%の重量になります。このためアルミほどではありませんが軽いという印象が強くなります。

また一般の鉄(鋼)に比べ、ステンレスは耐食性が良好ですが、ステンレスが苦手な海水などでもチタンは腐食しません。耐食性にはかなり優れた材料と言えます。


表1に示すように、JISではJIS H4600に1種から4種まで規定されていますが、数字が大きい方がFeやOの含有量が多くなり、強度が高くなります。


一般の鋼板で使われる軟鋼から60キロ鋼程度の強度をカバーしています。比重が低い分、重量当たりの強度(比強度)は高くなります。多く使われるのは、1種、2種の比較的強度の低い種類です。

合金チタン系

これらの純チタンに加え、さらに耐食性を改善するために微量元素を添加したものが、耐食性チタン合金です。

1種から3種にさらにパラジウム(Pd)を0.15%程度添加し、塩酸や硫酸腐食を抑え、耐隙間腐食性を向上させたものが11種から13種に規定されています。

他に、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)を添加した耐食性チタン合金として14種から23種が規定されています。高価なPdの添加を抑制してコストダウンを図ったものや、耐硝酸腐食を抑制するものなど、必要に応じて使用されます。


メーカーでは、JISに規定されていない特殊な用途に向けたチタンを各社独自のブランド名で販売しています。

これらの耐食性は用途が限定されますので汎用的ではありません。また、これらの耐食Ti合金と呼ばれるものは、基本的にはα合金の範疇です。


さらに、金属相をコントロールした合金系のTi材料があります。チタン合金には、α合金、α-β合金、β合金の3種類があります。最も有名なのがJISで60種に分類される、α-β合金のTi-6%Al-4%Vです。α相とβ相が混在した形になります。


航空機(特に軍用機)に使用され、Ti素材の発展を支えてきたものです。アルミ(Al)はα相を安定化させますが入れすぎるとTi3Alが析出し、靭性低下などの問題を生じるので、6%以下の添加に限られます。


Al添加による高温に強く強度が高いという特徴と、β相を安定化させるバナジウム(V)を添加することで高い靭性と加工性が得られるという特徴を併せ持ち、バランスの優れたチタン合金です。チタンと言えば、このチタン合金のことを指していました。


α合金としては、Alを1.5%添加したJIS の50種があり、高温強度が高く、高温での耐酸化性に優れ、純Ti並みの加工性を有しています。二輪車のマフラーなどに使われます。


β合金では、Vを22%とかなり大量に含んだJISで80種に分類されるTi-4%Al-22%Vがあります。これは、溶体化処理した状態では室温で成形加工が可能なのが特徴です。加工後、時効処理で強度アップも図れます。


チタンは腐食に強く、溶出しないことから金属アレルギーなどの影響が少なく、生体適合性も高い金属です。合金添加されるVは少量添加では害は見られていないものの、単独では毒性がある金属のため、できれば避けた方がいいという考え方もあります。


表1には板の規格を載せていますが、他に管、棒、線材などもあります。

表1 チタン及びチタン合金の分類(JIS H4600参照)

チタンの特徴として、軽い、耐食性がいいこと以外に、表2に示すようなものがあります。


線膨張係数が小さいのは、温度を上げても伸びにくいので、変形が少ないということです。また、コンクリートやガラスあるいは航空機に使われる炭素繊維強化複合材(CFRP)の値に近く、これらの材料との相性がいいです。


熱伝導率が低いということは、熱を伝えにくいため、熱が放散されずに維持されやすく、保温材として使えます。コップやポットに効果的です。一方で、切削加工の際に、熱が籠って温度が上がり、加工しにくくなるなどのデメリットにもなります。


ヤング率が低いということは、たわみやすいということで、構造物としては力が加わった時に変位が大きくなり必ずしも好ましいとは言えません。一方、自転車のフレームなどで振動を吸収し乗り心地が改善したり、メガネフレームで変形させてしまっても元に戻りやすいなどの効果があります。


また非磁性であり、磁石につきません。加工の際の固定に磁石は使えませんが、非磁性であることを活用した用途は考えられます。MRIの周辺機器や電子機器で磁気の影響を避けたい場合などに使用されます。


このような、チタンの特徴を考慮しつつ、材料を選定していくことが必要です。

表2 チタンの物理的性質(鋼材との比較)

以上、vol.1では素材としてのチタンについて、種類や特徴、性質について解説いたしました。

今後、以下の予定でブログを掲載いたします、ご期待ください。

  • vol.2では、チタンの加工方法や用途についいて
  • vol.3では、チタンの意匠性について

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