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SB材とは。SB410などボイラ・圧力容器用鋼板について vol.2

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SB材とは。SB410などボイラ・圧力容器用鋼板について vol.2

※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。


鋼材コラムをご覧いただき、ありがとうございます。前回vol.1に続いて今回は以下項目を解説いたします。

目次

  1. 鋼材の使用中変化
  2. クリープ現象
  3. 許容引張応力
  4. 使用温度域
  5. SB材の溶接
  6. 市中在庫 汎用性
  7. SB410の物理的性質
  8. ボイラ・圧力容器用鋼の使い分け

SB材とは。SB410などボイラ・圧力容器用鋼板について vol.1


鋼材の使用中変化

先のVol.1で述べた通り、ボイラや圧力容器は温度や圧力が高い状態で使われることになります。温度が高いと室温での試験結果とは異なる機械的性質を示しますし、高温で圧力がかかった状態で使用し続けると機械的性質自体が微妙に変化していきます。


これらを考慮した鋼材規格や設計条件が必要になってきます。ここが常温、常圧で使用される一般の鋼材と大きく異なるところです。


鋼材の品質は、表面はさびなどで変化するのは良く知られていますが、内部の品質も実は微妙に変化を続けているのです。JIS上、常温と定義される5~35℃では、ほとんど無視できる程度の変化ですが、温度が上がるにつれて、いろいろな変化が生じてきます。


150℃を超える温度になると、鋼中に含まれる炭素(C)や窒素(N)などの微小な元素が動きやすくなります。


さらに温度が上がり、300℃とかの温度になるとより顕著になり、それが原因で常温に戻した時に以前と異なる機械的性質を示すことがあります。


400~600℃のようなさらに高い温度域では、長時間保持すると金属組織が前より大きく変わったりします。特に450℃を超えるような領域では、黒鉛化と呼ばれる事象が生じ、強度の低下が大きくなります。


鋼は鉄の原子と炭素の原子が混在して強度の高い金属組織を形成しているのですが、高温で炭素が移動して集まってきて、炭素の塊になってしまい(黒鉛化)、残りは鉄がほとんどのフェライトと呼ばれる柔らかい相になって、大幅に軟化してしまうのです。


何の変哲もない鋼材が、温度が上がることでいつの間にか内部まで変化してしまっているのは不思議ですね。


SB材が使われる温度域は、0~538℃程度を想定しています。この中でも、大きく分けて350℃以下と400℃以上の2つの温度域に分けられます。


350℃以下では、その温度での高温引張強さが重視されます。比較的、鋼材の組織変化が少ないため、高温で使用中の強度がどうなるかを、実際に温度を上げた状態のまま引張試験を実施して確認するのです。


中温、高温について書きますが、ここでは通常試験する常温より温度が高いという意味で、共通で高温という表現を使っています。

クリープ現象

使用温度が400℃以上では高温強度に加えて、クリープ強度と呼ばれる高温で長時間引張り続けた場合に鋼材が破断するかどうかを考慮に入れる必要があります。


クリープ現象はその温度での降伏点よりも低い応力でも、長期間荷重をかけているとわずかずつ変形が進み破断に至る現象です。高温で圧力がかかった状態で長期使用される圧力容器やボイラなどではこの現象を考慮する必要があります。


450℃以上では、このクリープ現象の評価に先ほどの黒鉛化も加わりますので、より複雑になります。クリープ現象は10万時間(11.4年)で破断が起きるかどうかで判断します。


しかしながら、非常に時間のかかる評価の上、鋼種や使用温度は広範囲で、試験・成分のばらつきもありすべての破断強度を正確に把握するのは困難です。そのためある程度の試験結果から内挿、外挿も使い、クリープ強度を決めています。

許容引張応力

許容される引張応力が圧力容器の構造に関するJIS B8265に決められています。


SB材のところを、表5に抜粋しますが、温度が高くなると極端に許容応力が小さくなることがわかります。また、モリブデン鋼は炭素鋼より高温側での強度の落ち方が小さくなっています。


クリープ領域未満では引張強さの1/4、降伏点の2/3の小さい方を採用していますが、前者の方が小さいのでそちらが採用されています。


クリープ温度域になるとクリープ強度のばらつきや安全率も考慮し、決められた数字になっています。


これより小さい応力で設計されれば、長期間の使用で破壊することもなく使用できると判断されます。しかしながら、高温ではかなり小さい数値なので、どうしても板厚が厚くなってしまう傾向にあります。


SB材は538℃までの使用を想定していますが、このような高温領域ではSBVやSCMVのようなもっと許容応力の高い鋼材を使った方が効率的なように思います。鋼種によっては650℃まで想定しているものもあります。


中・常温での使用に限るなら、JIS G3124の中・常温で使用されるボイラ・圧力容器用の高強度鋼板(SEV材)を使用する手もあります。


なお、許容引張応力については、圧力容器の設計に関するJIS B8267や発電用火力設備の技術基準では表6に示すように、450℃以下くらいでもう少し高い数値を使っています。


安全率を3.5倍とるか、4倍とるかの違いのようです。ASTMの改定に合わせて、3.5倍でいいという方向に進んでいるようですが、現時点では低い側の数値を取らざるを得ないのではないかと思います。早く統一して欲しいですね。

使用温度域

結局、JISでは中温、高温の定義は見つかりませんでしたので明確には区分できないのですが、中温はその温度での強度を重視する100~350℃程度、高温はクリープ強度を重視する400~550℃程度をイメージするのがいいように思います。あくまでも私見です。


また、SB材を常温で使っても強度上は問題は無いと思うのですが、靭性が十分でない場合がありうるので、あとの使い分けで述べる常温用を使うべきでしょう。

使用温度域イメージ(単位=℃)

SB材の溶接

圧力容器では、円筒状の胴板の両端を鏡板と呼ばれる鏡餅に似た形状の蓋をするような形が多いです。これらは溶接して使われることが一般的であり、SB材も溶接されることを前提にしています。


溶接材料は、SB410~SB480の炭素鋼は、SM材などと同じ軟鋼および490MPa級高張力用の溶接材料が使われます。


一方、モリブデン鋼に対しては、溶接材料にもMoを0.5%程度含む専用の溶接材料が必要です。日本溶接協会が下記に紹介しています。


C―0.5Mo鋼溶接に対する溶接材料選定基準および溶接時の留意点


いずれにしても、溶接部の品質は重要なので、溶接士の資格認定も必要ですし、機械試験、非破壊試験、耐圧試験など各種評価がなされます。

SB材の市中在庫 汎用性

SB材はSS400やSM材に比較すると用途が限られるので、市中在庫は限られています。クマガイ特殊鋼では、SB410を中心に在庫しておりますので、お問い合わせください。SRにも対応可能です。

SB410の物理的性質

最後になりましたが、SB410の各温度における物理的性質を表7に記載します。これは、JIS B8265の付属書から一部抜粋したものですので、必要に応じ原文を参照ください。

ボイラ・圧力容器用鋼の使い分け

これまで、ボイラ・圧力容器用鋼としてSB材を中心に書いてきました。

表8にはSB材以外も含めて、JIS規格を一覧表にしてみました。表の下部には低温用や原子力用を除く、圧力容器用鋼材も加えています。これだけでも、ボイラ用として4種類、圧力容器用として8種類もあるので、使い分けは非常にややこしいですね。


図1はボイラ用の規格について常温の強度レベルと使用温度域で図示してみましたが、重なっているところも多く、鋼材選択は単純ではありません。


この図では表せない高温での許容引張応力なども考慮して選択することが必要です。特に、高温での許容引張応力を重視する場合は、Cr、Moなどの添加された鋼材を選択することが有効です。


まずは、SB材が使えるかどうか、課題があるときはより上位グレードでの検討を進めるのがいいでしょう。

まとめ

以上、2回に渡ってSB材について解説いたしました。


かなりややこしい部分もあり、わかりにくかったかもしれませんが、疑問点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

クマガイ公式YouTubeチャンネルで解説動画公開中

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