SB材とは。SB410などボイラ・圧力容器用鋼板について vol.1
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※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。
鋼材コラムをご覧いただき、ありがとうございます。今回からはボイラ及び圧力容器用のSB材について紹介したいと思います。
目次
- JIS規格について
- ボイラと圧力容器について
- SB材のJIS規格の種類と板厚、成分、機械的性質
- 母材の熱処理、試験片の熱処理
1.JIS規格について
SB410などのSB材はJIS G3103に規定されています。番号順ではベースのSS400などの「一般構造用圧延鋼材」のJIS G3101の次に位置する規格です。
「ボイラ及び圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板」という名称の通り、少し温度が高く圧力がかかる用途に用いられる鋼材になります。
SB材のSはSteel、BはBoilerからとったものです。
規格の適用範囲には「中温から高温で使用される」と書いてあります。この部分を読んだだけでは中温って何度? 高温って何度? 常温では使っていけないの?ということでよくわかりませんので、これから解説していきます。
2.ボイラと圧力容器について
最初にボイラと圧力容器について簡単に紹介します。SB材以外にも各種ボイラ・圧力容器用の鋼材が使われます。
ボイラーとは、熱源により大気圧を超える蒸気や圧力の高い温水を作って、他に供給する装置です。発生した蒸気はタービンを回して発電に使われたりします。規制が厳しいのは、伝熱面積の大きいものや最高使用圧力の高いボイラーです。
蒸気ボイラーの場合、下記が対象になります。
- 最高使用圧力0.1MPa超または伝熱面積1㎡超
- 胴の内径350㎜超または胴の長さ600㎜超
他に、温水ボイラー、貫流ボイラーなどもありますが、ここでは省略します。
なお、法令関係では「ボイラー」という表記が多いようですが、JIS規格では「ボイラ」と表記されますので、以降は「ボイラ」で統一します。
一方、圧力容器は、容器内に大気圧を超える液体または気体を保有する密封容器になります。
圧力容器も爆発・破壊の危険があるので、用途により電気事業法、ガス事業法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法など各種規制を受けます。
圧力容器のうち、第一種圧力容器は大型のボイラと同じく、製造するためには県労働局長の製造許可が必要になります。
第一種圧力容器とは蒸気を内部に保有する容器のうち、最高使用圧力や容積が大きいもので下記が対象になります。
- 最高使用圧力(MPa)と内容積(㎥)の積が、0.02超。
- 最高使用圧力0.1MPa以下でも(胴の内径500㎜超または胴の長さ1000㎜超)
注)小型圧力容器も第一種圧力容器の一部ですが、規制の対象が異なりますのでここでは除きます。
他に、第二種圧力容器などの区分がありますがこれも省略します。
ちなみに大気圧は約0.1MPaに相当しますが、ゲージ圧では0MPaGとなります。
最高使用圧力0.1MPaはゲージ圧なので大気圧にさらに大気圧相当の圧力がかかった状態(絶対圧力で約0.2MPa)です。ここは混同しないようにしましょう。
大気圧では水は100℃以上になりませんが、密閉して圧力を上げると水の沸騰温度は100℃を超えて高くなっていきます。ボイラはどんどん高圧、高温に進化しており、中高温材料が重要になってきているのです。
3.SB材のJIS規格の種類と板厚、成分、機械的性質
ここで、改めて、SB材のJIS規格(JIS G3103)について紹介します。
表1に示すように、SB材はSB410、SB450、SB480、SB450M、SB480Mの5種類になります。前半の3つが炭素鋼、後ろの2つのMが付いたものがモリブデン鋼になります。表中にのちの溶接後熱処理の参考になるJIS Z3040の母材の区分も入れておきます。
410などの数値は常温の引張強さの下限値になります。
モリブデン(Mo)の入ったモリブデン鋼は高温での軟化抵抗があるため、あとで述べるように、高温での許容応力が高くなります。
適用厚さは炭素鋼が6~200㎜、モリブデン鋼が6~150㎜です。SB材は比較的降伏点が低く、あとで述べるように高温での強度も考慮に入れないといけないので、設計板厚は厚くなる傾向があります。
また、板厚公差はJIS G3106のSM材が呼称厚に対して±同じ範囲で規定されているのに対して、SB材ではマイナス側は-0.25㎜固定で、プラス側はSM材と同じ公差レンジになるように決められています。すなわちSM材が±0.75㎜なら公差レンジは1.50㎜なので、SB材では-0.25㎜、+1.25㎜になっています。
これによって、母鋼板サイズに関わらず、最低板厚は同じになり、設計上の合理性が保たれています。
SB材の成分については、表2に示すように、Mnの上限をSB480は1.20%以下、それ以外は0.90%以下と比較的低く抑えられています。その分、Cの量を高めにして高温強度を稼ぐ思想になっていると思われます。ただし、Cを下げた場合、Mnの上限を緩和する規定も設けられているので、必ずしもCが高めになっているわけでもありません。
また、結晶粒の大きい粗粒鋼にすることで、あとで述べるクリープ強度を高くするという思想がありましたが、現規格では特に規制されるような表現は入っていないので、特に粗粒鋼でないといけないということにはなっていないように思います。
いずれにせよ、使用温度が高い場合は、高温強度やクリープ強度を配慮して成分設計がなされた鋼材を使う必要があります。
規格通りでも、従来の成分を無視して高温強度やクリープ強度を考慮していない鋼板は確認しないと心配はあります。
ただそのような場合は、SB材よりももっと高温強度の高い鋼材が使用される場合も多いと思われ、実際にはSB材は最高使用温度として何度くらいまで使用されているのでしょうか。
4.母材の熱処理、試験片の熱処理
母材の製造に関して、炭素鋼の50㎜超、モリブデン鋼の38㎜超は製造業者(鉄鋼メーカー)が焼きならしを行わないといけませんが、注文者(鋼板の使用者)が焼きならしまたは同等の加熱を行う場合は、その限りではありません。
その際は、母鋼板をどういう条件で製造するか協定します。後で述べる、鏡板など加工度の大きいものは熱間で加工する場合もあるのです。
鋼板を冷間加工後や溶接後、応力除去焼なまし(SR)する場合は、母材の試験片にその熱履歴を施した後試験を実施することを指定できます。
その場合、SB410SRのように種類の記号の後ろにSRを表記します。SB410の標準的なSR条件は板厚38㎜超の鋼材に対し、625℃で板厚25㎜当り1時間の保持時間(ex.板厚50㎜なら2時間)のようになります。母材の区分がP-3-2に分類されるSB480Mでは16㎜超で要求されます。詳細はJIS Z3700、JIS B8265などを参照ください。SRは溶接後の場合、溶接後熱処理(PWHT)とも呼びます。
このように、試験片には実際に使用する際の熱履歴に相当する焼きならしや溶接後熱処理の熱処理条件を指定して注文することができます。実際の熱履歴後の機械的性質が重要ですからですね。
板厚が薄くても試験片にSRの要求がある場合があります。この理由の一つは、溶接された容器全体を炉でSRすることがあり、そうすると板厚の薄い部材も同時に熱処理されるためです。
この場合、板厚の厚い部分によって保持時間が決められるのですが、後に述べる市中品では、その時間まで配慮したものは少ないと思います。もちろん、その板厚で加工も含めた応力除去する場合もあります。
Vol.1まとめ
以上、SB材について以下の項目を解説いたしました。
- JIS規格について
- ボイラと圧力容器について
- SB材のJIS規格の種類と板厚、成分、機械的性質
- 母材の熱処理、試験片の熱処理
次回Vol.2では、以下の項目について解説する予定です。
- 鋼材の使用中変化
- クリープ現象
- 許容引張応力
- 使用温度域
- SB材の溶接
- 市中在庫 汎用性
- 物理的性質
- ボイラ・圧力容器用鋼の使い分け
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