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衝撃で硬くなる?磁性がない?高マンガン鋼( ハイマン、NM-13MN)とは vol.2

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衝撃で硬くなる?磁性がない?高マンガン鋼( ハイマン、NM-13MN)とは vol.2

このブログは特殊鋼のスペシャリストであるクマガイ特殊鋼が、業界ビギナーから百戦錬磨のベテラン社員さん等に向けて、特殊鋼に関する基礎知識はもちろん「なるほど!」と思っていただけるようなまめ知識など、楽しく情報収集していただけるブログを不定期で更新しております。

耐衝撃摩耗用鋼板 NM-13MN| 製品情報 | 創業1913年 鋼板・鋼材の専門商社|クマガイ特殊鋼株式会社

※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。


前回vol.1では、ハイマンガン鋼の概要や歴史、規格や特徴、製造方法について解説しました。

今回は、機械的性質や物理的性質、切断や溶接をはじめとした加工ノウハウ、用途などについて解説していきます。

耐衝撃摩耗鋼板 ハイマンガン鋼 在庫表 NM-13MN

13Mn鋼の機械的性質

13Mn鋼を引張試験すると、比較的早くから降伏現象が生じますので、降伏強さ(耐力)はあまり高くありません。これは、一般的なステンレスと類似の現象です。


一方、加工硬化の影響が大きいので、引張試験中にも変形によりどんどん硬くなっていき、引張強さは80キロ鋼をはるかに超えるようなレベルに上がっていきます。


普通の鋼材の引張試験ではネッキングと呼ばれる部分的な変形が大きくなって切れるのですが、この鋼材は変形する部分があるとそこがより硬くなるので、他のまだ変形の少ない柔らかい部分が引き続き変形し、結果的に試験片全体が変形するまで長く伸びるような事象が想定されます。そのせいもあるのか、伸び性能としても非常に良くなります。


このように、13Mn鋼は、耐力は低く、引張強さは高く、伸びも良好な特性を示します。


高マンガン鋼は低温用途での使われ方もあるように、オーステナイト組織でもあり、水靭処理により有害な炭化物も消滅していますので、靭性は良好になります。とても1%も炭素が入った鋼材とは思えないほどです。


オーステナイト中には炭素が固溶しやすいのです。靭性を評価するシャルピー衝撃試験に関しては、ハンマーで、一瞬でたたかれたものを評価するので、硬くなる暇もなく良好な靱性を示している可能性は考えられます。一旦加工硬化させたものを試験したら、少し下がるかもしれませんがそれでも高いレベルは保持します。


13Mn鋼の使われ方としては、表面は衝撃で硬くなっても、内部は初期のままである場合が多く、靭性は良好ということで問題ないと思います。

耐衝撃摩耗鋼板 ハイマンガン鋼 在庫表 NM-13MN

13Mn鋼の切断

13Mn鋼はシャーでの切断は硬化してしまうので向いていません。刃が欠けてしまいます。


ガス切断は硬さの影響を受けないのですが、Mnの影響かノロの湯流れがよくないようで、ガス圧、切断速度などの条件の設定が重要になります。


一方、レーザー切断やプラズマ切断では比較的容易に切断可能です。いずれの場合も、切断時の粉塵(ヒューム)が多くなりますので、排気対策は必要です。


また、コストと時間はかかりますが、ウォータージェット放電加工(ワイヤカット)でなら、細かい加工も含め切断可能です。

13Mn鋼の加工

切削にしろ、ドリルの穴あけにしろ、のこ切断にしろ、加工する際には表面を変形させて削り取ることが多く、13Mn鋼にとっては硬くなる条件がそろっています。そのため、加工中にだんだん硬くなり、削れなくなってしまいます。文字通り加工硬化です。


このため工具にも特別なものが必要になるなどノウハウが必要です。

NM-13MN t16への切削・穴あけの試作品

曲げ加工に関しても、曲げると表面が変形して(伸びて)ひずみを受けるので、硬くなってしまいます。しかしながら伸びが高いせいか、曲げ割れには比較的強くロール曲げ、プレス曲げなどは十分可能です。


クマガイ特殊鋼は加工に関しても経験豊富ですので、ご相談ください。

13Mn鋼の接合、溶接

13Mn鋼を表面保護用のライナー材等として使用する場合は、皿もみ加工やザグリ加工して、ボルトで止めることが多くなります。溶接することも可能です。


一般炭素鋼材に溶接でつける場合は、309系の溶接材料が有効です。これは一般鋼とステンレスを溶接する際にも使われるものです。ただし、これは溶接部の耐衝撃摩耗は期待できないものです。


他に手溶接用の溶接材料として、13Mn鋼専用のH-MCrというものがあります。これは炭素鋼との溶接のみならず、13Mn鋼同士の溶接にも適用されます。炭素鋼との境界は308Rを適用して割れ抑制することもあります。


これらの溶接材料は日鉄溶接工業(株)で手配できますのでお問い合わせください。

溶接の際にも切断時同様、ヒュームの発生が多いので排気対策は必要になります。


また、13Mn鋼は550~850℃に加熱すると炭化物の析出によって脆化する領域がありますので、溶接熱影響部はなるべく小さくするような配慮も必要です。せっかく水靭処理で改善した母材が戻ってしまうのですね。この悪影響を抑えるために、溶接の入熱を小さくすることは有効です。また、溶接後冷却速度を速めるために水冷も効果があります。


13Mn鋼は炭素が高く、炭素当量も非常に高いですが、オーステナイト相のため水素による遅れ割れは発生しないので予熱は必要ありません。

13Mn鋼の物理的性質

13Mn鋼の熱膨張係数や熱伝導度などの物理的性質は一般の炭素鋼よりもステンレスに近い特性を持ちます。一般炭素鋼より熱膨張係数や電気抵抗は大きく、熱伝導度は小さくなります。熱は伝えにくいけど温度が上がると膨張しやすいというような感じでしょうか。熱膨張係数が大きいのは溶接時に変形の原因になります。

非磁性鋼なので、マグネットでハンドリングはできません。


ステンレスは加工などでひずみを与えると磁性が生じるものもありますが、高マンガン鋼は加工しても非磁性を維持する違いはあります。比重 は、鉄よりも少し軽いマンガンが大量に入っているので、軽くなりそうですが、充填率の高いオーステナイト組織(FCC構造)になっていますので、結果的には普通鋼よりわずかに大きくなるようです。商売上の質量計算は、一般炭素鋼と同じ7.85の比重で計算しているので、ほんの少しお買い得になっているのかもしれません。

13Mn鋼の用途

13Mn鋼の用途としては、各種ライナー材、破砕部品、破砕機(クラッシャー)、土砂ホッパー、ショットブラストの内張、粉砕機等々、衝撃が加わって摩耗するところに最適です。他にも何かがぶつかって摩耗して困っているような用途があれば是非お問い合わせください。

以上、13Mn鋼について解説いたしました。


140年も前にこの最善の成分系をピンポイントで発見したことに敬意を表しながら、思いつくままに書き綴ってみました。少しでも興味をもっていただければうれしいです。


クマガイ特殊鋼では、鋼材選びに限らず加工に関しても様々なノウハウを持っていますので、是非お気軽にご相談ください。

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