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そもそもSS400って?板厚、規格、性能についても解説します vol.2

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そもそもSS400って?板厚、規格、性能についても解説します vol.2

SS400の解説動画を公開しました。こちらもご覧ください。

前回vol.1では、SS400の概要・規定値・規格・物理的性質ついて解説しました。


今回は実際に使用する際の注意点や、板厚・市中在庫・溶接性などを解説いたします。

この解説を参考にしていただいて、鋼材選びや加工のお悩みなどありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。


SS400の板厚

板厚の上限は決められていませんが、JIS G3106の溶接構造用圧延鋼材のSM400Aが200㎜以下、協定によって450㎜以下まで規定されていることを考えると、それ以上の厚さまで製造してもいいように思います。


ただし、降伏点の下限を守るために、熱処理(焼ならし)が必要になってきます。焼きならしによって、結晶粒が小さくなり、降伏点が上昇するのです。

板厚の下限規制もありませんが、下限は熱延材の1.2㎜程度でしょうか。一般に入手できるのは3.2㎜~150㎜程度かと思います。

SS400の場合、鋼板の寸法公差等はJIS G3193によるとされております。


標準的な板厚公差は、注文厚(呼称厚とも言います)に対してプラス・マイナス同じレンジで決められていますが、下限を「0」にしてプラス側のレンジを倍にして注文することもできます。ただし、後で述べる在庫鋼板は、プラス・マイナス同じレンジが基本になります。

この板厚公差は、板厚や板幅によって数値が細かく決められています。板厚が厚くなるほど、板幅が広くなるほど公差レンジも広くなります。この基準も、製造する側の都合で設定されているのではないでしょうか。


鋼板は一般的に熱間圧延時、鋼板の両サイドと幅中央では幅中央が厚くなる傾向があり、幅が広いとよりその傾向が顕著になるため公差も広げられています。


このことは、どの大きさの母材から切り出したかで板厚公差が異なっていることを意味します。


例えば、板厚25㎜で幅1500㎜の母鋼板から切り出した部材は±0.70㎜の公差ですが、幅1600㎜の母鋼板から切り出した場合は±0.80㎜の公差になっているのです。


部材の厚み公差は、別途図面で指定されていると思いますが、JIS通りとなっている場合に母鋼板によって差が生じているのは矛盾を感じます。


これはSS400に限った話ではありませんが。ただし、圧力容器用鋼板などはマイナス側の下限を一律、-0.25㎜にしているなど配慮されたものもあります。

SS400の性能、溶接について

Alex FreemanによるPixabayからの画像

SS400の規格自体は非常に緩いものになっていますが、日本で製造される鋼板の性能はそれなりに高いものになっています。日本人の性善説に沿った規格のような気もします。規格通りで製造するとなると、かなり性能の悪い鋼材もあり得ます。

通常のSS400は曲げ加工もしやすいですし、温間加工や熱間加工で変形させることもできます。応力除去焼鈍(SR)や焼きならしなどの熱処理をしても、強度が規定値を外れることは少ないと言えます。線状加熱等による歪矯正に対しても材質変化の影響は少ないと言えます。しかしながら、熱を加えた後の機械的性質が保証されたものではないので、負荷応力が高い場合などは配慮が必要です。


またそもそも、一般構造用圧延鋼板とは、溶接を前提にしておらずボルト等で接合するのを前提にしています。


溶接して使用するのを前提にしているのは、JIS G3106の溶接構造用圧延鋼材です。


しかしながら、SS400を溶接して使用するのはかなり一般的な事象ではないかと思います。橋梁の製造指針である道路橋示方書には

  • SS400の橋への適用は非溶接部材に適用するのがよい。
  • 事前に化学成分を調査したり、溶接施工試験等により、溶接性に問題がないことを確認したうえで使用することができる。

となっており、場合によってはSS400を溶接して使うことも想定されています。


長年の間に、溶接しても問題ないというデータが蓄積され、溶接して使うのが当たり前のようになっていますが、単純にSS400だから溶接しても大丈夫だと考えるのではなく、きちんと評価・確認して使用することを忘れてはいけません。


特に材料の入手先を変えた場合や初めての用途などの時は慎重な対応が必要です。信頼できる入手先を選定しましょう。

溶接材料について

溶接する場合の溶接材料は軟鋼用を使います。


SS400と高張力鋼や耐食鋼などの鋼種が異なるものを溶接するときは、その部分にどの性能が要求されるかによります。耐食性が要求されるならそれにあった溶材が必要ですし、高強度が加わるなら高張力鋼用の溶材が必要となります。しかしながら、一般的にはそのような性能が必要ならSS400との組み合わせにならないはずなので、軟鋼用の溶材でいい場合が多いのではないでしょうか。


SS400とステンレスを溶接するような場合は、希釈による溶接割れの懸念がありますので、309系の専用溶材を使用してください。

SS400とSC鋼の溶接は本来推奨されるものではありませんが、どうしても必要なら低水素系の溶材を用いるとともに予後熱により溶接割れを避けてください。309系の溶材を用いるのも一案です。いずれにせよ、溶接部に要求される性能はよく認識し、溶接部の品質もよく確認することは必要です。

SS400の在庫

鋼板のサイズについて、製鉄所は数量があれば、1㎜単位で製造してくれますが、市中で鋼板を在庫する場合、あるとあらゆるサイズを在庫するのは不可能なので、定尺と呼ばれる、標準板厚、標準幅、標準長さのものを在庫することが一般的です。

定厚とは、板厚3.2㎜、4.5㎜、6㎜、9㎜、12㎜、16㎜、19㎜、22㎜、25㎜、28㎜、32㎜、36㎜、40㎜、45㎜、50㎜、60㎜…などですが、これら以外の中間厚や厚手についても在庫しておりますので、お問い合わせください。

幅と長さは表3に示すようなパターンが多いですが、幅2000㎜、2438㎜などもあります。これらの数値はJIS G3193に記載されております。

「しはち」「ごっとう」などの呼称は建築業界の呼び方を流用しているようですが、建築業界は単位が「尺」であるのに対して、鋼板は「フィート(ft)」であり、若干サイズは異なります。


ちなみに1尺は303.03㎜、1フィートは304.80㎜で、若干フィートの方が長いです。なぜ鋼板はフィートなのかは知りませんが、海外の標準サイズを呼び方だけ日本語読みしたということでしょうか。

幅1219は熱延で製造した鋼板、幅2000以上は厚板で製造した鋼板が多く、幅1524はどちらもあり得ます。また、長さ3000未満は熱延製品、それ以上はどちらもあり得ます。幅、長についてもこれら以外のサイズもありますので、お問い合わせください。

ちなみに、熱延鋼板とは、連続式の圧延機で製造されたホットコイルから切り出された鋼板です。

ss400 板厚
表3 在庫サイズ例

SS400の表面状態

鋼板の表面状態は、SS400も他の鋼材と同じように、黒皮と呼ばれる酸化スケールがついた状態が一般的です。酸化スケールの厚さや密着度は鋼板の製造法や成分で変わってきます。


一般に、電炉材の方が酸化スケールは厚く、密着度が高い傾向にあります。レーザ切断の場合には、スケール性状が切断性に影響する場合があり、電炉も高炉もレーザ切断用鋼板というものも製造しております。

黒皮以外に、熱延材では、酸洗によって黒皮を除去し、塗油した鋼板があります。また、ショットブラストにより、黒皮を除去した鋼板もありますが、さびやすいので在庫には向きません。

SS400の解説まとめ

以上2回記事に渡り、SS400について書いてきました。


興味ある話はありましたでしょうか。クマガイ特殊鋼は社名に『特殊鋼』と入っておりますが、ベース鋼材のSS400についても取り扱っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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