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そもそも SS400って? 板厚、規格、性能についても解説します vol.1

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そもそも SS400って? 板厚、規格、性能についても解説します vol.1

今回は、原点に返って最もベーシックなSS400についてご紹介したいと思います。
今さらSS400なんてと思われるかもしれませんが、意外と知らないことが発見できるかもしれません、ぜひご覧ください。


※この記事の内容は当社見解でありすべてを保証するものではありません。製品のご購入や加工などの際は当社を含めた専門業者への確認と目的・用途に応じた検証の上、当該材料をご使用ください。


JISについて

SS400はJIS G3101にある一般構造用圧延鋼材の1種です。


JISの番号体系のアルファベットは部門記号で「G」は鉄鋼部門を表しています。そのあとの4桁の数字は分類番号です。小さい方から用語の定義、試験方法、分析方法等が並んだあと、鋼材規格として最初に出てくるのがこの一般構造用圧延鋼材になります。その点からも鋼材の一丁目一番地とも言えます(この言葉は最近おじさん言葉に分類されるようです)。


JISのハンドブックでは、鉄鋼Ⅱの冒頭に出てきます。


JIS材については、JISマークの認証制度というものがあり、JISマークは認証を受けた事業所のみが製品に表示することができます。SS400と記載があっても、JISマークが表示されていない場合などは、その会社がJIS規格に合わせて作ったというだけの場合もありうるのです。JISの認証を受けているかどうかはしっかり確認しましょう。SS400と表示はできても、認証がないのにJISマークを表示することは違反になりますので、JISマークがあれば認証は受けていることになります。

SS400について

SS400は鋼板以外に、鋼帯、形鋼、平鋼、棒鋼があります。ここでは、鋼板を中心に書いていきます。


JIS G3101の一般構造用圧延鋼材にはSS330、SS400、SS490、SS540がありますが、一般的に流通しているのはSS400になりますので、SS(エスエス)と言えば、SS400をさすことが多いです。なお、SSはSteel Structureの略です。鋼材の流通量としては非常に多い規格でまさにベースの規格と言えます。

SS400の規定値(規格)

JIS G3101の中に、SS400の成分、機械的性質が決められています。

成分については、表1に示すように、りん(P)と硫黄(S)が規制されているのみです。ベースの規格とはいえ、世の中に大量に使われている鋼材が、これでいいのかと個人的には思います。実際には、機械的性質を満足するために、炭素(C)とマンガン(Mn)は添加されています。

これだけ、成分規制が緩いので、各社成分は異なっています。個社の中でもいろいろな成分が混在していることもありえます。通常はCが0.1~0.2%ほど含まれ、Mnは0.4~1.0%程度でしょうか。PやSは不純物元素で、有害な元素なので、規定値に対し、相当抑制して作られています。

電炉材は、Cu、Crなどの元素がスクラップから混入してくるため、これらが強度アップに寄与して、高炉材よりもC、Mnが若干低い場合もあります。

C
Mn
P0.050%以下
S0.050%以下
その他必要に応じてその他の合金元素を添加してもよい。
表1 SS400の化学成分

機械的性質については、表2に示す通りで、SS400の400は引張強さの下限値を表しています。


余談ですが、SI単位系導入前はSS400はSS41でした。


中途半端な41(kgf/㎜2)という数字がどうして設定されたのか知りませんが、SI単位化によって400というきりのいい数値に変わりました(SS50は逆に、SS490という中途半端になりましたが)。SS400はいわゆる40キロ鋼と呼ばれるもので、軟鋼の部類になります。

降伏点の下限は板厚によって変わっています。板厚16㎜以下は245 N/mm2以上で、厚くなるにしたがって少しずつ下がっていきます。これは、その板厚であるべき性能というより、厚くなるほど降伏強度が低くなりやすいため、作りやすさから決められたのではないかと想像します。他鋼種でもそうですが、降伏点の違いは設計でカバーしないといけません。

この降伏点については、板厚が薄い場合は引張強さの下限を守るように設定すると、降伏点は余裕をもって満足することが多いです。

伸びの数値は、試験片の形状によっても変わってくるので、この試験片でいくつ以上という規定になります。伸びの数値(%)が一緒でも試験片が異なると伸び性能が変わっていることは、知られているようで理解していない人も多いようです。


試験片が丸棒か板状かの断面形状でも違ってきますし、原標点距離と呼ばれる伸びを測定する基準長さの影響は大きいです。試験片はネッキングという局部的に変形が生じて切れるのが普通ですが、このネッキング部分での伸びが大きいため、基準長が長いと見かけ上、小さい数字になるのです。


SS400の曲げ試験は、板厚の1.5倍の内曲げ半径で180°曲げを実施し、表面に裂けきずが発生しないことになっています。試験片幅は20~50㎜と決められています。


厚さは通常、板厚そのものです。通常のSS400では、もっと小さい曲げ半径でも割れが発生しない場合が多く、曲げ試験で不合格になることはまずありません。従って、要求がなければ曲げ試験は省略してもいいことになっています。実曲げでも、もっと小さい曲げ半径でも割れが発生しないことが多いです。


一方、もっと強度の高い高張力鋼では、曲げ試験では合格でも、実曲げでは同じ曲げ半径で割れが発生することがありえます。これは、幅の狭い試験片での曲げと幅の広い実曲げでは拘束度が異なり、実曲げの方が厳しくなっているためです。


このように、曲げ試験は、あくまでも試験片での曲げ性を評価しているのであって、実曲げでその半径で曲がるかどうかを保証しているのではないことは理解していただきたいと思います。

表2 SS400の機械的性質

SS400の物理的性質

鋼板のベースであるSS400の設計等に必要な物理的性質の例を、表3に示します。多少前後することはありますので、参考値ということでご理解ください。

ヤング率 GPa206
剛性率 GPa80
ポアソン比0.3
線膨張係数 ×10-6/K11.7
熱伝導率 W/m K51.6
比熱 J/kg K473
比重 g/cm37.85
表3 SS400の物理的性質例

以上、SS400の概要、規定値、規格、物理的性質ついて解説しました。


興味ある話はありましたでしょうか。クマガイ特殊鋼は社名に『特殊鋼』と入っておりますが、ベース鋼材のSS400についても取り扱っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


次回vol.2では実際に購入する際の注意点として、板厚・市中在庫・溶接性などを解説いたします。


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